November 29,2022 INTERVIEW

Inside HIGHLACT®
創業100年の老舗繊維メーカー「小野莫大小工業」インタビュー

PLA(ポリ乳酸)はトウモロコシからできた素材であるため、一般的な化学繊維に比べると熱さに弱かったり、もろかったりして、生地にはしづらい素材であるとされてきました。
 
この難題に真っ向から立ち向かっているのが他でもない日本が誇る繊維メーカーの技術力です。
 
本日は、ハイラクト®の開発を担う、繊維の老舗メーカー小野莫大小工業有限会社(以下、小野莫大小工業)の佐原工場に伺い、同社取締役である高橋さんに、ハイラクト®の開発に懸ける思いなどを伺ってきました。

小野莫大小工業有限会社 高橋幸太郎取締役

常に最高品質の生地を生み出すため、革新的な方法で生地を開発

川沿いを中心に江戸情緒あふれる古い町並みが残る千葉県香取市佐原。
その中心部に小野莫大小工業の佐原工場はあります。
 

良い生地を作ることにこだわって開発された「小野式フライス編み機」

佐原工場の工場エリアにお邪魔するとまずお迎えしてくれるのが、「小野式フライス編み機」です。小野莫大小工業が独自で開発された編み機で、コットンだけでまるでゴムのような伸縮性の高い生地を生み出すことができます。通常の編み機は「早く、大量に作る」ために作られている機械なので、出来上がってくる生地は伸縮が小さく、生地が薄くのっぺりしていたいかにも大量生産の生地になります。しかし、小野莫大小工業では、多少効率が悪くても「良い生地を作る」ことにこだわり、編み目がきりっと引き締まった、まるでゴムのような非常に伸縮性の高い生地を編み出す機械を誕生させました。小野式フライスで編んだ生地は、何年使っても型崩れしない、コットンだけで体にフィットする編地を作り上げることができます。

世界のメゾンを驚かせた、羽衣のように薄いコットン「コズモラマ」

神社仏閣巡りがすきな小野莫大小工業の小野社長が「仏像の羽衣」のような生地をコットンで実現したいという想いから生まれた「コズモラマ」。シャリ感のある繊細なタッチ・上品なドレープが特徴です。「一流のものを作りたかったら、一流の素材を使わないとだめだ」という小野社長のこだわりから、インドの最高級超長綿100%使用し、小野莫大小工業独自の特殊加工を施した強撚糸を使用しています。特色のある生地は日本だけでなく数々の海外のハイメゾンにも採用されています。

小野イズムでハイラクト®を世界のトップブランドに

──ハイケムと一緒に、PLA繊維「ハイラクト®」の開発に乗り出していただけることになったのは何故ですか?
 
高橋:それこそ始まりは海外のハイメゾンがサステナブルじゃないと生地を採用しないと言い始めたことがきっかけです。だから、当社でもサステナブルな素材について僕たちも探し始めていました。でもどれも何かちがうな、と感じていたんです。そんな時に縁あってハイケムさんと出会いました。
 
PLAってなんかもうサステナブル素材の中でもちょっと違うジャンルですよね。洋服だけでなくプラスチック製品全般にも使える、こんな面白い素材はないと感じました。ハイケムさんと組めばそれができそう、いや絶対できると確信したので、是非一緒にやりたいと思いました。
 
ハイラクト®はコズモラマの次にメインにしたいというか、うちの1ページに載っけたい素材です。

HIGHLACT®生地

──PLAは繊維化するのに難しい素材だと思いますが、実際に取り扱ってみてどのような点が難しかったですか?
 
高橋:やはり、皆さんがいわれているように糸の強度と耐熱性が低い点が弱点です。これはまだ克服途中ですが、1年で真っ黒の生地が作れるようになったのは成果だと思います。そもそも、PLAは繊維にしてはいけない素材だといわれていましたので…。

小野莫大小工業 佐原工場 HIGHLACT®生地製造工程

──わずか1年で克服できたのは何故だと思われますか?
 
高橋:それは何といっても「PLAを何とかしたい」という、ハイケムさんや僕たちチーム全員の強い想いですね。
 
「想いがないと人は動かない」と思います。
 
コズモラマの時もそうですが、海外のハイメゾンに入れるために、どうやって本部の人と知り合ったらよいかわからなかったので、とりあえず、パリのショップの本店に電話を毎日かけ続けました。よほど不憫に思われたのかある日、担当に方に繋いでもらえた。難しいことをやるときは、それくらいばかげたことをやらないと、『強い想い』がなかったらそんなことできません。

HIGHLACT®生地

──開発から1年が経過しましたが、いかがですか?
 
高橋:この1年でいろいろなスタイルのPLAの生地が出来上り、色々なスタイルのPLAが完成してきています。去年と比べてもバリエーションが増えてきて、ちらほらと採用いただけるアパレルブランドも出てきました。
 
そういう意味で去年の12月に比べたら状態としてはかなり良くなってきています。
生地の状態もそうだし、選択肢も増えたことで、アパレルさんに見せたときの反応も変わってきていて、だいぶPLAを市場で受け入れてもらえるのではないかという感覚が出てきました。

──今後の目標を教えてください。
 
高橋:まずは、海外のハイメゾンに使ってもらうことですね。
 
海外に持っていく事のメリットは、日本の人が「いかに効率的にやるか」を最初に考えるのに対して、海外の人は、「製品をいかに高く売るか」を考えるんですよね。
 
PLAをここまでモードに消化できているのは日本しかない、いや我々しかいない。だから、まずは我々の取り組みを海外の人に理解してもらい、消化してもらいたい。
 
そこから、次にハイケムさんが目指されているような50億とかのステップを一緒に目指していきたいです。
 
PLAは生地だけでなく色々なものに代用できるので、様々なものをPLAに代替えしていく未来はきっと実現できると信じています。
夢物語ではなくてそういう風にしていかないといけない。
 
今後、車は確実にEVになっていきます。
変わっていくうちの一つがPLAなのではないでしょうか。
世の中はどんどん変わっていくものです。

──小野莫大小工業さんと一緒に突き進んでいけるのは、とても心強いです!
 
高橋:ぼくが求めているのは、歩みを止めずに小野イズムを追求すること。
こういう常に挑戦して皆がやっていない新しいことをやり続けるのが小野イズムなんですよね。
 
ポリエステルだって最初は「安かろう、悪かろう」だった、それが今みたいに発展してきています。
 
世の中は変わっていくので、それをちゃんと理解して先をみてどうするかなんだと思います。